不変を貫くのは大変だ。平成の歌姫・浜崎あゆみの変わらない姿勢。
通信カラオケDAMを運営する株式会社第一興商の発表によると、平成で最もカラオケで歌われた歌手は浜崎あゆみだそうだ。
そりゃそうだ。だって、みんな歌ってたもん。
歌もよかったかもしれないけど、それよりなにより、あの頃の浜崎あゆみは最高に可愛いかった。
アユの影響で、カラーレスでヌーディーな唇と頬、マスカラとアイラインだけはガッツリ、みたいなメイクが流行った。
流行ったのが若いころでよかった。いま同じメイクをしたら「どこか具合でも悪いの?」と言われること請け合いだもの。
メイクだけじゃなくて、なんだかよく分からないシッポまで流行らせちゃうんだから、当時のパワーは絶大である。(持ってなかったけど)
CDの売り上げだったら宇多田ヒカルだろうが、宇多田をカラオケで歌うのは難しいし、合コンでいきなり宇多田を歌ったら確実にモテない。我が道を行きそうでめんどくさい。椎名林檎なんか歌った日にはもう誰も話しかけてくれない。
その点、ファッションアイコンでもあったアユなら、そのフォロワーの多さゆえ、よくいる普通の女のコという安心感を演出するのに最適だったわけだ。カリスマのフォロワーは意外とコンサバティブ。
老化を劣化と呼ぶのは「オマエモナ」のブーメラン
浜崎あゆみのインスタグラムに投稿された写真のファッションがイタすぎてファン騒然、みたいなネット記事が定期的に流れてくるけど、そんなの騒いでいるのはファンじゃないと思うのだが。かつてファンだった可能性はあるけど。
試しにこの度、初めて浜崎あゆみのインスタを覗いてみた。
いまツアー中のようで、盛岡とかの小さなホールをまわっているようだけど、真摯に練習に取り組んでいる様子がうかがえたぞ。
本当のファンならたぶん、そんな写真を見てふつうに応援しているんだと思う。で、自分もライブを見に行くのを楽しみにしてるんじゃなかろうか。
確かに奇抜な格好をしているときもあるが、それを年齢にふさわしくないとかいうなら、志茂田景樹はあれでいいのか。
浜崎あゆみのかつてのフォロワーは、保守的な人たちなのだ。
普通に年相応に落ち着けば、劣化したなどと言われずに、いまごろVeryの表紙でも飾っていたかもしれない。
けれど、いくら歌のタイトルが”evolution”だからって、シッポまで流行らす感性の持ち主が、普通なわけない。
彼女は変わらない感性でいるだけなのに、そのことを若くて輝いていた頃に固執しているとか言われたら、大変気の毒な話である。
志茂田景樹よろしく好きな格好をしているだけ、ということではいけないのか。
浜崎あゆみは劣化したのではない。ただ老化しただけだ。あとちょっとだけイジりすぎただけだ。
そして、老化を叩くことができる人など誰もいない。
だって、第二次性徴を過ぎたらみんな老化していくじゃん。いや、それ以前に人は、生まれたときから生きつつあると同時に死につつあるらしい。学生の頃、哲学専攻のヘリクツな男のコがそう言っていた。
姿勢が悪いのも変わらない。でも別に、いいと思う。
浜崎あゆみには変わらないものがもう一つある。姿勢だ。
彼女の姿勢は、整体的に良いか悪いかで言えば、悪い。
姿勢を良く見せようとするあまり、胸を張り過ぎ、お尻を突き出しすぎて、腰椎が無理な曲がり方をしている。たぶん、腰痛の持ち主だと思う。
最初は意識的にやっていたのだろうけど、だんだん、この姿勢の形で固まってきてしまったのだろう。そこにはきっと、大変な努力がある。
長瀬智也と破局したときも、後輩の倖田來未が猛追を見せて焦りを感じていたかもしれないときも、エイベックスのお家騒動に巻き込まれてマックス松浦への義理を優先したときも、突発性難聴に見舞われたときも、AKBが隆盛を誇ってカリスマなる存在自体がオワコン化したときも、インスタの写真でしか話題にならなくなった今だって、いつでも胸を張り続けてきた。
私は、応援してくれるファンに愛されて、素晴らしいスタッフたちに囲まれて、幸せです、と言わんばかりに。
そうやっていまも、胸を張って地方巡業を続けている。
そう考えると、彼女の姿勢は本当に悪いのか。なんだかあやしくなってくる。
姿勢が悪いと言ったら、いままでの彼女の頑張りを否定するみたいになってしまうじゃないか。
実は、私たちの姿勢も、多かれ少なかれ、そんなもんである。
理想的ないわゆる「0度」の姿勢の人なんてほとんどいないが、頑張って生きるためには、その姿勢にならざるを得なかった。
人に見られるため、人の目を避けるため、立ち仕事に耐えるため、デスクワークに耐えるため、妊娠して大きくなったお腹を支えるため、子どもを安定して抱きかかえるため、ストレスから解放された時くらいグダっとするため、それぞれ事情は異なるが、なんとかみんなそうやって姿勢を悪くしてでも頑張ってきたのだ。
頑張りの積み重ねでそうなった姿勢を、いわば頑張りの証を、猫背矯正とか骨盤矯正とかしちゃってよいものか!せっかく頑張ったのに!
いや、まぁ、痛みとか冷えとか諸々支障が出ているなら、なんとかしたほうがいいとは思うけど。体は資本ですから。
でもきっと、頑張ってたらまた姿勢は戻る。けど別にいいんじゃないの、姿勢なんて悪くても。だって生活も生き方も、そんなに急にいろいろ変えられないもんなぁ。
もっと言ったら、痛くても冷えてても、そんなもん屁のカッパなくらい大事な何かがあるなら、それでいいとすら思う。いやむしろ、そのほうがなんか楽しそうだ。
さすがになんとかしたいっスってなったら、なんとかしたらいいよね。そのときはきっと、頑張りすぎてちょっと休みたいときとかだったりするんだろう。
浜崎あゆみさん、あなたが売れなくなってから、あなたにほぼ無関心に生きてきましたが、この度このように様々考えさせてくれてありがとうございます。
これから、少しだけまた応援してみようと思います。
ストレッチインストラクター。13年間のデスクワークの後、ストレッチと体幹運動で重い冷え性と生理痛を克服。デスクワーカー向けのストレッチレッスンをしています。
主婦の友社のウェブメディア「OTONASALONE(オトナサローネ)」でヘルスケアライターとしても執筆中。