むくみの原因。水分を摂るべき人、摂り過ぎてはダメな人。
体がむくむ人は、水を飲んだ方がよいのか、飲まない方がよいのか。インターネットで検索すると、「たくさん飲んだ方がよい」「飲まない方がよい」「適度に飲んだ方がよい」と色々な説が唱えられています。どうすりゃいいんだって感じです。
殊、整体やマッサージ店のホームページなんかでは、むくみの原因、それは!ホルモンバランスが!自律神経が!骨盤のゆがみが!腎機能の異常が!と、なんかすっごい煽ってくるんですけど。
ふつうにむくみが起こる理由を理解していれば、いきなりそこにはいかないはず。むくみのロジックをちゃんと説明できるセラピストってどれくらいいるんだろうか、と不安になるほどです。
そういうわけで、できるだけ分かりやすく、なぜむくみが起きるかをご説明します。
そして、私なりにむくみの原因タイプを分けてみましたので、お困りの方はぜひご一読を。
なぜ、むくみは起こるのか?の前にまず、体の中の水分のしくみ
体内の水分量は成人で約60%です。残りの40%はタンパク質、脂質、無機質などです。
ちなみに、乳児の水分量は70%、高齢になると50%というように、だんだん減っていきます。赤ちゃん、ぷるぷるですもんねー。羨ましい。
とりあえずここでは、成人の話をします。この60%の水分(=体液)は、20%の細胞外液と40%の細胞内液に分けられます。
細胞外液は、血漿(血液中の水分)、リンパ液、組織液(間質液)などから成り、栄養素や酸素を細胞へ送ったり、老廃物や二酸化炭素などを細胞外に運び出す役割をしています。
細胞内液は、エネルギーを生み出したり、タンパク質を合成したり、代謝反応に関係しています。
ざっくり言うと、細胞外液は血管やリンパ管の中の水分とかそういった管の外の水分とかで、細胞内液は体内のあらゆる細胞のなかにある水分といったところです。
で、この細胞外液と細胞内液の間では水分が行き来しています。(厳密にいうと、細胞内液と組織液の間、組織液と血漿の間。組織液からリンパ液への移動はありますが、逆はありません。)
毛細血管には隙間がありまして、その隙間から、血漿が染み出して、組織液になります。
その組織液が細胞との間で栄養分や老廃物の交換を行っているのです。
これによって細胞は必要なものを取り込み、不要なものが組織液を介して血液に入ります。
例えば、筋肉を動かす時に使われる酸素も、血管から組織液へと染み出し、細胞内液に入り込み、筋細胞でエネルギーとなって、二酸化炭素がまた血液に入っていく、というふうになります。
なお、二酸化炭素のような老廃物を含んだ水分は、組織液から血管に戻るものもあれば、戻れないものもあり、戻れないものはリンパ管に入ります。リンパは最終的に静脈に合流し、水分はまた血管に戻ります。
そして、むくんでいる状態とは、組織液の水分が多すぎる状態です。
お酒を飲み過ぎた翌朝にパンパンにむくんでいる肌と、潤いたっぷりで若々しいお肌の違いは、水分が細胞外液にあるか細胞内液にあるかの違いなのです。
ホメオスタシス(恒常性)ってなんだっけ??
細胞外液とは細胞の外の液体ってことなので、つまるところ、細胞にとってみたら生存環境なのです。
細胞が正常に機能するためには、生存環境は一定に保たれていることが望ましい。
一定に保たれていること、つまり恒常性。これがカタカナだとホメオスタシス。
細胞外液におけるホメオスタシスですが、何が一定に保たれているのかというと、電解質濃度、ph、血糖値、体温などなど。
細胞外液のなかの組織液の水が多すぎる状態は、このホメオスタシスを保とうとするがために生じるのです。
例えば、細胞外の電解質濃度が濃すぎるぞ、となると「一定にしなくちゃ!」と、細胞内から水分が染み出て細胞外の電解質濃度を薄めるのです。
むくまないようにするには、この組織液の水分が多すぎないようにする必要があり、単純に水分を摂ったり摂らなかったりして体の水分量を調節するだけの話ではないのです。
で、どうしたらいいのって話です。はい。それは後述いたします。
ちなみに、体液の電解質ですが、細胞外液にはナトリウムイオンが多く、細胞内液にはカリウムイオンが多く溶けています。
細胞外液は、細胞にとって生きる環境。最初の生命、単細胞生物は海から誕生しました。だから、細胞の外の液は、海と似てナトリウムが多いんですね。
タイプ別むくみの原因と対処法
ケース1.血液サラサラになるように無理して水をたくさん飲んでいますが、むくみが取れません。
組織液に水が溜まっている状態では喉が渇きません。水もあまり飲めない人が多いでしょう。
水が溜まっているのだから、飲んでももっと溜まるだけです。
まずは、水を出してください。なにごとも、出さなければ入りません。
と言っても、こういうタイプの方はトイレの回数も少ないのでは。
老廃物が組織液にとどまったまま、血管に再吸収されないため、排泄されないのです。
尿で水を排出しづらいなら、汗をかきましょう。運動をしたり、お風呂などで体を温めて汗をかいてください。
そうすれば、組織液の水分量が減り、水を飲めるようになります。尿がでるように、汗をかいたあとは水を多めに飲んでください。
お客様に「夏は汗をかくから水分を摂ってしまうのですが、むくむから飲まない方がいいですか?」と聞かれたことがありますが、汗をかくなら飲んでください!脱水症状になりますよ。
ちなみに、汗をかくこと=デトックスと思われがちですが、汗にそこまで毒はありません。
尿の方が圧倒的に毒素が豊富(?)です。排泄の基本は尿と便です。
汗をかいて、組織液の水分を減らし、それから水分をしっかり摂って、尿で排泄する。そこまでいってデトックスです。
また、先ほど、血管に戻れなかった老廃物を含む水分はリンパ管に入ると書きました。
リンパ管は、血管と同様に筋ポンプで流れが良くなります。
従って、やっぱりオススメなのは、運動することなのです。
利尿効果があり且つ体を冷やさない、生姜湯などを飲むのもよいでしょう。
ケース2.どちらかと言えばトイレは近い方なのですが、むくみます。
こういうタイプの方は、冷え性で体温も低いでしょう。私もそうでした。
冷えの刺激に膀胱が収縮して活動しすぎることで尿意を感じるのであって、循環が良いわけではありません。
むしろ、血液循環が悪いから冷えているのです。膀胱炎になった経験もあるのでは。
また、通常口から摂取された水分は、胃や腸で吸収されて血液に入りますが、冷えているせいで吸収が良くありません。お腹がゆるくなることも多いはず。
水分が出ていってしまうのですから、きちんと補給したほうがよいですが、利尿作用が少なく体を温める飲み物を選びましょう。
利尿作用が少ない飲み物は、糖やカフェインを含まないものです。まぁ水と麦茶くらいしかないんですけど。最近は、デカフェのコーヒーや紅茶もありますね。冷たくないものを飲みましょう。
なぜ体が冷えているかというと、運動不足で筋ポンプが働いておらず、血行不良になっているためです。
血の巡りが悪ければ、水分の行き来が活発に行われません。
このタイプはふくらはぎや足先のむくみが顕著なはずです。
運動しないため筋ポンプが起こらず、水分が重力で下に溜まるのです。そして溜まった水で余計に冷えるのです。
でも大丈夫!そんな人こそ、このブログがぴったりです。ほかの記事もよく読んで色々な筋肉を動かしたり伸ばしたりしてみてください!
冷え性でなくても、「今日はずっと立ちっぱなし(座りっぱなし)でいたから足がパンパンだわ!」ということはあると思いますが、一時的なものであれば悩む必要はありません。お風呂に入って寝れば、明日には戻ります。
ケース3.運動不足ではないはずなのですが、むくみます。
ナトリウム、つまり塩分の取り過ぎの可能性があります。
浸透圧って覚えてますか?理科で習ったやつ。
例えば、お漬物。塩の混ざったヌカのなかでシナシナに水分を奪われます。
例えば、ナメクジ。塩をかけるとシナシナになって息絶えます。
水は濃度の濃い方から薄い方へ移動する性質があるのです。
前述のとおり、細胞外液にはナトリウムイオンが多く、細胞内液にはカリウムイオンが多く溶けています。
細胞外液中のナトリウムの濃度が高くなると、細胞内液の水分は細胞外へ出ていきます。それでむくみが生じるのです。
普段の食事で、塩分を摂り過ぎないように注意しましょう。
逆に、カリウムを多く含む食物は組織液の水分の排出に役立ちます。
当然、むくみの悩みのない人は、汗をかいた後などには水分と一緒に塩分も補給しましょうね。
ストレッチインストラクター。13年間のデスクワークの後、ストレッチと体幹運動で重い冷え性と生理痛を克服。デスクワーカー向けのストレッチレッスンをしています。
主婦の友社のウェブメディア「OTONASALONE(オトナサローネ)」でヘルスケアライターとしても執筆中。