噂のサイバーセキュリティ担当大臣に学ぶ、習慣と弊害
サイバーセキュリティ担当大臣がUSBを知らないとか、任命する方も引き受ける方ももうめちゃくちゃだよ、という事件。
部下に指示をだしていたので自分でパソコンを操作することはないって、いくら偉くたって10年前でもそんなやつ絶滅危惧種じゃないか?
昔ながらのやり方を貫徹する無骨な男と、最先端テクノロジーを駆使したサイバー攻撃との闘いが始まろうとしているのかもしれない。ブルース・ウィルスが主役でも負けそう。
ワイドショーではコメンテーターが「官僚がしっかりやっているとは思いますが」と苦肉のフォローをしていた。
たぶんそうだと思うけどさ。
慣れ親しんだものはそれだけで価値がある
前職で、ある省の役人とやり取りをしていた時のこと。(ほぼ全ての省庁と同じような件でやり取りしていたので具体的にどこだったか失念してしまったのだが)
こちらから申請したいことがあったので、様式があればデータでほしい旨を伝えたところ、見たことのない拡張子のついたファイルが送られてきた。
当然、開こうとしても開けない。無駄と知りつつも、強引に拡張子を「.doc」にしてみるが、やっぱり開かない。(成功したためしがないのに、なんでやっちゃうんだろう、あれ)
開かない開かない、と騒いでいたら、近くの席の若い男性社員が調べてくれた。
「どうやらそれ、一太郎みたいですね」
ほう・・・君は若いのに一太郎を知っているのか。
いや、そうじゃない。おいおい、お上はいまだに一太郎なんて使ってるのか。そしてそれを当然のように送ってくるのか。
さすがに私も一太郎は使ったことがないが、MicrosoftのOfficeが普及する以前、日本でそこそこのシェアを誇っていたワードプロセッサだということは知っている。
きっとこの申請書は、Windows95が発売されるより前から変わらずに使われているのだ。
そういえばあの頃、まだ家庭にはPCなんてなくて、学校では「情報」の授業が実験的に行なわれ始めた。
教師も何をしたらよいか分からなかったのかもしれないが、パソコン室で2人1台ずつのPCを前に、インターネットを使ってホワイトハウスのウェブサイトにアクセスするように言われた。
当時のクリントン大統領が飼っている猫の鳴き声が聞けるというのである。
「にゃー」
みんな反応に困ったよね。それでInformation Technologyでもって世界と瞬時に繋がれる、とか言われてもさ。
せいぜい猫の鳴き声という情報の取得方法しか教わらなかったにもかかわらず、私たちはその後、「ネチケット」とは何かを教えられた。
家庭にPCが普及するようになっても、ネットに接続するにはダイヤルアップでピーヒョロヒョロ。いまならそんなの耐えられない。便利は人をせっかちにする。
かつてはケーブルにまみれたPC周りも、いまでは充電アダプターを除いてすべて無線。
最近ではGoogleドキュメントとかスプレッドシートでこと足りるようになり、もうOfficeの搭載すら必要なくなりつつある。
ヘイ役人さん、時代は変わるんだぜ。
そう言ってやりたかったけど、システム担当の人が一太郎をWordファイルにコンバートできるソフトで変換してくれたので、黙ってWordファイルに入力して送り返した。
ワードじゃ開けないので一太郎で返送してください、とは言われなかった。
一太郎を使い続ける気持ちが分からないこともない。
慣れ親しんだものややり方は、良し悪しにかかわらず、もうそれだけで価値がある。
楽だから。
慣れていれば慣れている物事ほど、考えなくていい。緊張しなくていい。半分寝ててもできる。素晴らしき予定調和。心の平安。
スマホアプリをアップデートしたらインターフェイスがちょっと変わっただけでも「なんかやられた!」と思ってしまう。
慣れた動きしかしないと健康でいられない
体に関してはもっと素直で、私たちは無意識にやり慣れた動きしかしない。
朝起きてから家を出るまでのルーティンは、すべて決まっている。
毎朝、同じ時間に同じ行動をする方が効率がよい。忙しい朝の時間は金より貴重だ。
早起きは三文の徳とかいうけど、三文払えば寝ていられるなら、とりあえず三十文くらいは課金し続ける自信がある。ちなみに三文は100円程度らしい。
そんな調子だから、寝ぼけたままでも体が覚えたとおりにこなせる行動をする方が楽なのだ。
ところで突然ですが、骨格筋はその種類が400以上あります。
そうです、私は久しぶりに整体師のような話をしようとしております。
その400以上もある筋肉のすべてを万遍なく使えていれば、体中の血が淀むことなく流れる。
しかし、いつも同じ行動ばかりしていては、いつも同じ筋肉しか使われない。
いつも使ってばかりの筋肉は凝り固まり、使われない筋肉はどんどんショボくなる。
だから、ルーティンで生活するのはよくないよ、と整体塾の先生は何度も言っていた。
いつもは右から履く靴下を左から履いてみるだけでもいい、そういうところから、いつもとは違う行動をしてみなさい、と。
そもそも、どっちの足から靴下を履くかなんて覚えていないんだが・・・。そのくらい無意識に筋肉を使っているわけですけど、そういう場合はどうしたらいいですか。
ってことで、私なりに、いつもは右から描く眉を、左から描いてみたりした。
ぜんぜん、うまくいかないよね。
いつも通りやったってたいしてうまくいかないものを、反対からやったら、そりゃもっとうまくいかない。
もう20年以上、毎日描いているのに、ぜんぜん上達しないのは何故なのよ。眉ほど謎の多い3Dはないよ。
でも、面倒でもちょっと不慣れでちょっと難しいことをやってみる、そのせいでその動きにちょっと意識がいく、てことが大事なのかもしれない。
とはいえ、出来栄えへの影響が少ないものから始めるのがよさそうだ。眉は難易度が高い。
誤解なきよう書いておくが、一太郎を貶めたいわけではありません。
なんかすごい書体が豊富なうえに「日本に来日」みたいな意味が重複して誤った日本語を直したりしてくれるらしいよ!
あの申請書も、こだわりの書体で作られていたのかしら。ワードに変換してしまった私には知る由もないけれど。
ストレッチインストラクター。13年間のデスクワークの後、ストレッチと体幹運動で重い冷え性と生理痛を克服。デスクワーカー向けのストレッチレッスンをしています。
主婦の友社のウェブメディア「OTONASALONE(オトナサローネ)」でヘルスケアライターとしても執筆中。