堀内恒夫さんに共感。筋トレすればいいってもんでもない
堀内恒夫さんのブログがおもしろいので、いつも楽しみにしています。
昨日、書かれていた記事にとても共感したので、リンクを貼らせていただきます。
選手がやみくもに体重を増やすことに警鐘を鳴らしています。
記事の中でも説明されていますが、「体重を増やす」とは「太る」ということではなく「大きくなる」ことを意味しています。
アウターの筋肉の力に頼りすぎると体をうまく使えない
ウェイトを増やす、ということは、アウターの筋肉を鍛えることと同義と言ってよいでしょう。
ウェイトトレーニングといったらアウターの筋肉のトレーニングです。インナーマッスルを鍛えても体はそんなに大きくなりません。
アウターの筋肉とは、表面で触れる筋肉と思ってください。
筋トレ好きならみんな大好き「腕立て伏せ」で大きくなる上腕三頭筋も大胸筋も、いわゆる「腹筋運動」でできる6パック(腹直筋)も、アウターマッスルです。
鍛えれば鍛えるほど、筋肥大が起きやすく、効果が目に見えて分かるので、鍛えるモチベーションも上がりますよね。
ただ、アウターマッスルがインナーマッスルに対して強くなり過ぎると、体を上手に使うことができなくなります。
その結果、体を壊したり傷めたりしてしまうのです。
好きで鍛えている人は、まぁ放っておくとして、生まれつきアウターマッスルが強い人がいます。
正確には、白筋が多い、と言ったほうがよいでしょう。
お客様にもたまにいらっしゃって、先日も、肩こりがひどくて腕を上げるのも痛い、という方がいらっしゃったのですが、まさに白筋が多いタイプの方でした。
※赤筋と白筋は、こちらの記事でもご紹介しています。
赤筋と白筋、インナーマッスルとアウターマッスル
インナーマッスルとアウターマッスルは、それぞれ役割があります。
インナーマッスルは、骨の近くにあり、骨を固定したり微細な動きをするときに働きます。
アウターマッスルは、骨から遠いところで、テコの原理を使ってパワフルに骨を動かします。
姿勢の維持や負荷の小さな動きにはインナーマッスルが、大きな動きやパワーを発揮するようなときにはアウターマッスルが使われるのです。
一方、筋繊維には、赤筋と白筋があります。
赤筋は、血を多く含み酸素が豊富にあるため、持久力に優れます。赤筋は、インナーマッスルのなかに多く含まれます。
姿勢を維持したり呼吸のような負荷の小さな動きをするにはインナーマッスルが使われるので、赤筋が多く持久力があった方がいいですよね。
白筋には血があまりありません。それゆえ持久力はありませんが、瞬発力に優れ、瞬間的に大きなパワーを出すことができます。
そういうわけで、白筋は、アウターマッスルのなかに多く含まれ、テコの力をパワフルに使えるようになっているのです。
インナーマッスル=赤筋、アウターマッスル=白筋というわけではありません。
インナーマッスルのなかに赤筋も白筋もありますが、赤筋の方が多い。同じようにアウターマッスルには白筋の方が多い。という意味です。
で、この赤筋と白筋が体の中に含まれる割合は、生まれつき決まっています。
筋肉レベルでは、持久走が得意なタイプと、短距離走が得意なタイプは、生まれつき分かれているのです。
アウターマッスルに頼りすぎると体を壊す理由
インナーマッスルに対してアウターマッスルの方が強すぎると、パワーに頼った体の使い方をしてしまいます。
アウターマッスルを鍛えていなくても、白筋がもとから多いと、やっぱりパワーに頼った体の使い方をしてしまいがちです。
なぜ、パワーに頼ってはいけないのでしょうか。
たとえば、想像してください。
さっきスーパーで5キロのお米を買ってきました。
とりあえず帰ってきて、スーパーのビニル袋に入ったまま玄関に置きっぱなしなので、別の場所に動かそうと思います。
どうやって持ち上げますか?
なんとなく正解は分かるかと思いますが、ちゃんと膝を曲げて、腰を下ろして、重心を下げ、お米の袋を両腕の上に載せ、なるべく袋を体に近づけ、おへその下あたりに力を入れて、立ち上がるのがよいでしょう。
横着な人は、膝を伸ばしたまま、重心を下げずに、腕の力だけで袋の持ち手を引っぱって持ち上げるでしょう。これはピキッといくパターン。
でも一方で、それは力があるからできることでもあります。
力のない人は、それでは自分には持ち上げられないと分かっているから、まぁ言ってみれば仕方なく、体全部を使って持ち上げようとするのです。
力がある人は、できちゃうもんだから、やってしまうのです。
そういうことが、日常の動作のあちこちで起こります。
そうやってアウターの筋肉ばかり使っていると、インナーマッスルが使われず、どんどん弱っていきます。
だから、本来インナーマッスルがするべき仕事も、アウターマッスルでやろうとしてしまうのです。
たとえば、呼吸だってそうです。持久力のないアウターマッスルに常に呼吸をさせていたら、そりゃガチガチに凝り固まってしまいます。
※呼吸筋についてはこちらの記事をご参照ください。
日常生活のためにはウェイトトレーニングは必要ない
前述の堀内恒夫さんのブログでは、「大きくなっていいやつと そうじゃないやつがいる」「自分に必要かどうか」と書かれています。
確かにその通りで、もともと赤筋が多くてそのままではパワーが足りない人は、アウターの筋肉を鍛えることが有効でしょう。
でもやみくもにアウターの筋肉を鍛えてウェイトを増やしても、力任せになってしまい体をうまく使えなくなってしまう(重心をうまく使えないとも言える)可能性があるわけです。
イチローは「大事なのはパワーではなく、何によってパワーが生まれるかだ」と言っています。
イチローは極端なウェイトトレーニングには否定的で、彼の筋トレは小さな負荷によるインナーマッスルの鍛錬やの筋肉の柔軟性を養うような運動がメインです。
それでも、ライトからの矢のような三塁への送球は「レーザービーム」と呼ばれ、メジャーリーグを沸かせたのです。
何によってパワーが生まれるか、それは、体の上手な使い方によって、なのです。
さて、何かのスポーツで食っていくのなら、アウターの筋肉を鍛えることも時には必要かもしれません。
けれど、私たちが日常生活を営むにあたっては、アウターマッスルはそんなに鍛える必要はありません。
鍛えるなら、インナーマッスルのほうです。
まぁ、楽しさや達成感で言ったら圧倒的にアウターの筋トレですけど。
腰痛になるのは筋力が少ないせいだ、と、ウェイトトレーニングをがんばってる方がいらっしゃいますが、やめたほうがいいです。
「自分に必要かどうか」の「必要」を見誤らないことも大切です。
※とはいえ、スクワットだけは必要なのです!
ストレッチインストラクター。13年間のデスクワークの後、ストレッチと体幹運動で重い冷え性と生理痛を克服。デスクワーカー向けのストレッチレッスンをしています。
主婦の友社のウェブメディア「OTONASALONE(オトナサローネ)」でヘルスケアライターとしても執筆中。